
Z/IPStream R/20は、Telos AllianceのZ/IPStreamシリーズに属する、放送用ストリーミング音声の処理・エンコード・送出を行う専用装置です。ソフトウェア版Z/IPStream X/20の機能を、24時間運用を前提とした1RU筐体にまとめた製品で、複数番組を1台に集約する用途に適しています。
装置内では、入力音声を『音声ソース』として登録し、そのソースに対して処理、AAC/MP3エンコード、アダプティブ配信用マルチレート・エンコード、ウォーターマーキング、局内出力などの処理インスタンスを組み合わせます。同じ音声ソースを複数インスタンスで共有できるため、1番組から複数品質・複数形式・複数配信先を作る構成が可能です。
オプションで番組数を追加、プロセッサー処理タイプ選択、各種ウォーターマーキングなどが選択可能。

| 処理プログラム数 | 標準2、最大8。処理方式とシステム負荷により同時稼働数は変動 |
| 音声処理 | Omnia 3バンド(標準)、Omnia Forza HDS/Omnia.9(オプション) |
| 音声コーデック | AAC-LC、HE-AAC、HE-AAC v2、xHE-AAC、MP3 |
| ビットレート | 16~320 kbps(コーデック依存。MP3のマニュアル記載値は20~320 kbps) |
| アダプティブ配信 | Apple HLS、Microsoft Smooth Streaming |
| 音声入出力 | Livewire+ AES67、AES3(AES/EBU)、RTP入力 |
| AES3入力 | 最大24 bit、192 kHz(製品ページ記載値) |
| ネットワーク/管理 | Gigabit Ethernet×2、HTML5 Web UI、REST API、SNMP、メタデータ入出力 |
| 電源 | デュアル電源。各100~264 VAC、50/60 Hz、入力電圧自動判別、合計最大100 W |
| 寸法 | 44(H)×483(W)×394(D)mm、1RU |
| 質量 | 本体約4 kg、梱包時約5.4 kg |
| 冷却/温度 | 強制空冷。動作0~50 ℃、非動作-20~70 ℃ |

システム構成と信号の流れ
| 段階 | 機能 | 設定例 |
| 1. 入力 | AES3、Livewire+ AES67、RTPから音声ソースを定義 | 番組A、番組B、ネットワーク予備入力 |
| 2. 前処理 | Omnia処理、または処理なし。必要に応じてウォーターマーク付加 | Forza HDSで目標LUFS管理 |
| 3. エンコード | AAC/MP3、または複数ビットレートを同時生成 | AAC-LC 128 kbps+HE-AAC 48 kbps |
| 4. 送出 | 各エンコーダーから複数の配信先へ送信 | 主系Icecast+予備系Icecast |
| 5. 監視 | 内蔵HTTP試聴、ストリーム監視、SNMP、メール通知 | 無音・接続断を設備監視へ通知 |
1つの音声プログラムから複数エンコーダーを作成でき、さらに各エンコーダーから複数サーバーへ送信できます。
Omnia音声処理
ストリーミングでは、単にピークを抑えるだけでなく、素材間のレベル差、聴取環境の違い、非可逆圧縮で顕在化する音質劣化を考慮した処理が必要です。
R/20は要求水準に応じて3種類のOmnia処理を選べます。
| 処理方式 | 位置付け | 適する用途 |
| Omnia 3バンド | 標準搭載。プリセットを基にWeb UIで調整 | 多数番組を効率よく処理する基本構成 |
| Omnia Forza HDS | ストリーミング/HD/DAB向け5バンド処理。Sensusコーデック・コンディショニング、BS.1770ベースの目標ラウドネス制御、True Peak制御を備える | 配信プラットフォームのラウドネス要件と自然な音質を両立したい番組 |
| Omnia.9 | 最大7バンドの高度な処理。NfRemoteから詳細調整・計測 | 音作り、解析、精密なダイナミクス/スペクトル制御を重視する主力番組 |
エンコードとアダプティブ配信
| コーデック | 特徴 | 選定時の考え方 |
| MP3 | 幅広い互換性。公式マニュアルの有効範囲は20~320 kbps | 既存プレーヤーや受信環境との互換性を優先 |
| AAC-LC | 標準的なAAC。高~中ビットレート向け | 迷う場合の基本選択。音楽を含む一般配信 |
| HE-AAC | SBRで低ビットレート時の高域を補完。24~96 kbpsを想定 | 回線帯域を抑えつつ音楽品質を確保 |
| HE-AAC v2 | HE-AACにパラメトリック・ステレオを追加。14~56 kbpsを想定 | さらに低い帯域。プレーヤー互換性の確認が必要 |
| xHE-AAC | 低ビットレートで音声・音楽の双方を扱う拡張HE-AAC | モバイルや不安定な回線を想定した低帯域配信 |
アダプティブ・ストリーミング
アダプティブ配信では、同じ番組を複数ビットレートでエンコードし、聴取側の回線状況やプレーヤーに応じて配信品質を切り替えます。R/20のマルチレート・エンコーダーは、Apple HLSおよびMicrosoft Smooth Streamingに必要なStream Access Pointを生成します。
通常の単一ビットレート配信と異なり、アダプティブ配信では複数のエンコード出力が同時に発生します。上り回線帯域、サーバー側ストレージ/セグメント処理、マニフェスト、キャッシュ、広告挿入との連携を含めて設計します。
配信先、メタデータ、冗長化
配信先とプロトコル
ICEcast、SHOUTcast/SHOUTcast v2、Wowza、Adobe Media Server/RTMPのほか、Triton Digital、Akamaiなどの配信サービスとの連携が示されています。RTP出力はユニキャストとマルチキャストに対応します。エンコーダー・インスタンスには複数の宛先を設定でき、同一エンコードを主系/予備系サーバーへ同時送出できます。
メタデータ
送出自動化システムなどから曲名、アーティスト名、番組名、広告関連情報を取り込み、配信ストリームへ付加できます。複数のプレイアウト形式に対応し、公開するフィールドを調整可能です。配信事業者へ渡したメタデータは、楽曲情報表示だけでなく、広告差し替え、番組ブラックアウト、ストリーム切り替えにも利用できます。
ストリーム同期と冗長化
Stream Synchronization機能は、別筐体・別拠点のエンコーダーで生成するビットストリームを同期させ、同一化することを目的としています。冗長配信サーバーへの単純な二重送出より一段進み、エンコーダー側を含む冗長構成を支援します。実運用では音声入力、クロック/PTP、メタデータ、設定、WAN経路、サーバー切替条件まで同一性を確認する必要があります。
ウォーターマーキングとアップミックス
NielsenおよびFifty5Blueのオーディエンス測定用ウォーターマーキングに対応し、資料によってはKantar Media対応も案内されています。オプションのDéjà Vuはステレオ音声を5.1チャンネルへアップミックスし、MPEG Surroundでエンコードします。
管理・監視と24時間運用
| 機能 | 内容 | 運用上の用途 |
| HTML5 Web UI | 設定、状態確認、インスタンス管理 | 日常設定と遠隔保守 |
| REST API | ストリーム開始/停止、入力切替、ファイル音声挿入などを外部制御 | 自動運行・監視システムとの連携 |
| SNMP | 装置、音声ソース、ストリームの状態を設備監視へ提供 | NMSでの集中監視 |
| メール通知 | 無音や接続異常などのイベント通知 | 障害の早期把握 |
| ストリーム監視 | SHOUTcast/Icecastなどの配信出力を受信監視 | 配信サーバー以降を含む正常性確認 |
| NfRemote | Omnia.9の調整、RTA、FFT、オシロスコープ、ラウドネス計測 | 高度な音質調整と解析 |